『花まつり 〈灌仏会、仏生会、降誕会〉』
今江 美和子
「花まつり・灌仏会」とは、何をするのか?
花まつりはもともと灌仏会(かんぶつえ。仏生会、降誕祭などとも)と呼ばれ、
仏教の創始者であるお釈迦様の生誕をお祝いする仏教行事です。「花まつり」とも称されるようになったのは明治時代以降のことです。キリスト教でイエス・キリストの誕生を祝うのがクリスマスであるのと同じで、仏教ではお釈迦さまの誕生を祝うのが「花まつり」、ということになります。
日本のように、中国を経由して伝わった(北伝仏教)国々では、お釈迦さまは旧暦4月8日、インドのルンビニ(現在はネパール連邦共和国)で生まれたとされていますが、その典拠は不明です。日本ではそれにちなんで新暦の4月8日または5月8日に「花まつり」(灌仏会、仏生会、降誕祭)が催されます。
「花まつり」として知られるお祭りの正式名称は「灌仏会(かんぶつえ)」。
“仏に濯(そそ)ぐ”ことから「灌仏会」と名付けられ、「降誕祭」(こうたんえ)、「仏生会」(ぶっしょうえ)、「浴仏衣」(よくぶつえ)、「竜華会」(りゅうげえ)、「花会式」(はなえしき)ともいわれます。
「承和七(840)年四月八日に、清涼殿にしてはじめて御灌仏の事は行はしめ給ふ」との記録が残っており、その起源は平安時代までさかのぼるといわれています。また、「花まつり」の名称は明治時代に浄土宗が採用したものとされています。
「花まつり・灌仏会はいつ?」
お釈迦様の生誕が4月8日とされているため、「花まつり」・「灌仏会」はこの日に開催されるのが一般的です。
ただし、旧暦の4月8日や月遅れの5月8日に開催するお寺もあり、地域によって異なります。主に関東地方では4月8日、関西地方では5月8日に開催されることが多いそうです。
「花まつり」・「灌仏会」では、お寺でどんなことをするのか?
お寺で開催される花まつり・灌仏会では、さまざまな伝統的行事が行われます。
お釈迦さまのお生まれになった4月8日に、その誕生を祝う行事です。
花々に彩られた花御堂(はなみどう)の中にいらっしゃる小さなお釈迦さまのお像に甘茶(あまちゃ)を掛けた、という記憶があるかもしれません。これは、お釈迦さまが誕生された際、天から神々が降りてきて祝福のために甘露の水を注いだという経典の説示に由来します。一般的には「花まつり」の呼び名で親しまれています。ご命日に勤める涅槃会(ねはんえ=2月15日)や、悟りを開かれたことを祈念して行う成道会(じょうどうえ=12月8日)と並んで、釈尊三大法要の一つに数えられます。
「花御堂(はなみどう)」に誕生物を安置する。
この日のために作られた小さな御堂(※仏像を安置した堂のこと)である花御堂に、
右手で天を指した誕生時のお釈迦様をかたどった銅像・誕生仏(たんじょうぶつ)を安置します。
これは華やかな色や香りを持つ花によって仏を供養するという意味があり、
花御堂は色とりどり華やかに飾られます。
仏が歩く道にまく散華(さんげ)と呼ばれる行いになぞらえたものです。
参拝者が誕生仏に「甘茶(あまちゃ)」をかける。
花御堂に安置された誕生仏に、参拝者が甘茶をかけます。
こうすることで、体を洗い清め、子どもの身体健全や諸願の成就を願います。
甘茶をかけることで虫よけやまじないにも使われたそう。
花まつり中、お寺によっては甘茶を振る舞ってくれることもありますが、そもそも甘茶って何?と思われる方も多いでしょう。甘茶とはアマチャの木から作られた、独特な甘さのあるお茶のこと。
ストレートな紅茶に砂糖を加えたような上品な味わいと表現する人もいるとか。
「稚児行列(ちごぎょうれつ)」を行うお寺も。
稚児行列とは、平安装束モチーフの衣装を着た子供達が行列を作り、街を練り歩く行事のこと。お寺によっては、花まつりに稚児行列が開催されることもあります。
生きとし生けるものである衆生(しゅじょう)に教えを授けて下さったお釈迦様の生誕に対する感謝や、そのご利益をいただくことで、子供達の発育の祈願をします。
行列などで見られる「白い象」の意味は?
お寺によって、白い象の置物が登場することがあります。大きさはさまざまで、大きな像の背中の上に花御堂をのせていることも。
「白い象」が神聖な動物として扱われている理由は、お釈迦様の母である摩耶夫人が
“夢の中で六本の牙を持つ白い象を見た”ことでお釈迦様を懐妊したといわれていることから。白い象がお釈迦様を運んできた、と信じられていることに由来しています。
また、白い象は雨を表し、五穀豊穣を意味するともいわれています。
〈 感 想 〉
お釈迦さまの誕生日は、仏教系の幼稚園に通園していた、
幼かった私の記憶にもしっかり残っています。
子ども心に、色とりどりの花でお釈迦さまを飾り立てたのを覚えています。
仏教徒の私は、自宅の仏壇にお参りをする際には、
ご先祖様にばかり気持ちがいってしまい、
お釈迦さまのことまでなかなか意識に登らないのですが、
これからはその大本であるお釈迦さまのことを思いながら、
感謝のお参りしたいと思います。
今月も誠にありがとうございました。
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