聖数「七」と星のめぐり逢い 〜 七夕 〜
今江 美和⼦
七月七日は七夕です。七夕を「たなばた」と読むのはなぜでしょう。「たな」は棚、「はた」は機です。七月七日の夜、遠来のまれびと・神を迎えるために水上に棚作りして、聖なる乙女が機を織る行事があり、その乙女を棚機女または乙棚機と言いました。七月七日であったために「七夕」の字を当てました。万葉集にはたなばたは織女とかかれていますが、新古今和歌集では七夕となっており、「七夕」の字は平安時代に当てられたものでありことがわかります。
七夕と言えば、天の川を隔てて会うことができなくなった織姫と彦星が、一年に一度だけ 会うことができるというロマンチックな星物語が有名な日です。
そもそも七夕は盆行事の一環として、先祖の霊を祭る禊の行事でありました。人里離れた水辺の機屋に神の嫁となるべき処女が神を祭って一夜を過ごし、翌日七夕送りをして汚れを神に託して持ち去ってもらう祓えの行事でありました。盆に先立つ、物忌みのための祓えでもありました。
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そこで、七夕の室礼に、竹の葉、グラジオラス、富貴、那花で花束を作りました。
そして、それぞれの花について調べてみました。
●笹の葉《笹》
1 竹についている葉。笹(ささ)の葉。竹葉。 2 《「竹葉(ちくよう)」を訓読みにした語》
3 酒のこと。
●グラジオラス
アヤメ科グラジオラス属の植物の総称。日本には自生種はなく、園芸植物として植えられている。別名、トウショウブ、オランダショウブ。 名前は古代ローマの剣であるグラディウスに由来し、葉が剣に類似していることが根拠といわれる。日本では明治時代に輸入され、栽培が開始された。根は湿布薬の材料に使われる。
●富貴花
【牡丹】遅咲品種に金帝(きんてい)(レエスペランスともいう,黄一重),金晃(きんこう)(アリス・ハーディングともいう,黄万重)などがある。
中国では、牡丹は,中国を代表する花として,花王,花神,富貴花など多くの別称をもつ。宋代の洛陽では花といえば牡丹をさした。
天香国色、花神などの名が呼ばれている。宋の欧陽修の『洛陽牡丹の記』は有名。
●那花《アザミの花》
人類が初めて出会った雑草(キク科)。 「アザミは嫌われ者」であるとか…。
神の教えに背いて、禁断の果実を食べたアダムとイブは、エデンの園を追い出され、イバラやアザミの生えた中から、果実を見分けて食べなければならなくなったという。 アザミは私たち人類にとって、初めて出会った雑草でもあると言います。
日本語の「アザミ」の名は、「あざむ」に由来するといわれています。あざむには「興ざめする」という意味があり、美しい花だと思って触れると、トゲがあって驚かされる。つまりは、「あざむかれた」ということなのだ。アザミは漢字で「薊」と書くが、草冠に魚(骨)と刀を書き記した字も、アザミのトゲをよく表しています。
ヨーロッパでは牧草地などによく生えるが、トゲがあるので、牛や馬もアザミを食べることはない。そのため、アザミだけが食い残されて、雑草として広がっていく。
何ともやっかいな雑草です。
ところが不思議なことに、スコットランドでは、アザミは国花として愛されており、昔、スコットランドがノルウェーの大軍に攻められたとき、夜襲を掛けようとしたノルウェー軍の兵隊がアザミを踏んで悲鳴を上げたため、奇襲に気がついたスコットランド軍は大勝を収めることができました。そして、それ以降、スコットランドの人々を悩ませていたノルウェー軍の侵攻はなくなったという。こうしてアザミは国を救った花とされ、スコットランドの国花や紋章となったのです。
今月の《盛り物》ですが、当初は、花束を逆さに下げたものをお作りしましたが、『目上の方に差し上げるものとしては、いかがなものか??』との山本先生のお言葉から、テーブルの上に置き直したものといたしました。そして、「傘の絵柄を添えては?」との山本先生のお言葉から『番傘』の絵を添えました。
晴れた夜空に見える七夕に傘…とは、意外でしたが、『番傘』には人生でも馴染みがなく、少し調べてみることにいたしました。
【 番傘 】
和傘発祥の地はタイ・ベトナムなどで、そこから中国を経て日本に伝わりました。中国の唐からの伝来なので、唐傘(からかさ)と呼ばれるようになりましたが、それまでの雨具はかぶり笠のみでした。昨今、和傘の製造は、その発祥の地に帰りつつあるそうです。
和傘は、まず第一に日本式の和傘であること。 唐傘(中国式傘)は親骨に小骨を差し込む「作り」であることに対して、和傘の「作り」は、親骨を小骨が挟みこむように作られております。親骨を差し込む「作り」の唐傘(中国式傘)は親骨を太く製作しないといけないため、傘を閉じたときに親骨の数が少ないにも関わらず、太くなります。
日本式傘(和傘)は親骨・小骨を細く製作できるため、傘を閉じたときに細く、軽くなります。しかしながら、親骨・小骨を細いため、唐傘(中国式傘)より強度が弱くなり、骨数を増やすことで強度を補っております。日本式(和傘)の「作り」は非常に繊細で、製作できる職人の数も非常に少ないのが現状だそうです。 ________________________________________
日本の七夕の夜は、雨が降っていることも多いけれど、男女ともに仲良く、
夫婦は互いを高めあっていければ幸いである…と存じます。
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